『錆びた夜……』、『恋愛ルビ……』から続くかんちゃんこと林田の物語。それぞれ独立して成立していたものの、ほんの少し説明や詳細が省かれて(伏せられて?)いた事柄がこの作品で明かされ、あの時はそうだったんだ、弓があんな感じだったのはそういう事情があったんだと合点がいったけれど、小冊子特装版の『薊』を読んで胸が苦しくなった。
林田を取り巻く環境が少しずつ、でも、確実に彼を蝕んでいく様子が短いながら凶器のように突き刺さってきた。ただ、その凶器の中に弓の心の奥底に仕舞いこんだ真山への恋心もあったと思うと切なくなる。
秀那は見た目がイケメンでイージーモードで恋愛してきたイイ意味での軽さがあって、それが頑なだった林田には堪らなく良かったのかなと思う。
秀那の転勤以外は特に大きな事件は起きず、拗れそうになってもそれほど酷く拗れたりせず、林田と秀那の付き合いを見ているだけなのに飽きたり中弛みすることなく読ませるのは凄いなと改めて作者さんを尊敬した。