ネタバレ・感想ありちらん -特攻兵の幸福食堂-のレビュー

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征く者、残される者
2025年7月30日
作者様の“戦争めし”を興味深く読ませていただき、別作品も拝読してみようと検索したところ、この作品と出会いました。
特攻隊のお話も描かれておられたのですね。戦中が舞台の作品のうちでも、私がとても興味を持っているテーマの一つです。
この物語にメインで登場するのは、鹿児島県の知覧にある陸軍指定の食堂の一家。“特攻の母”として名高い鳥濱トメさんの“富屋食堂”がモデルだそうです。
そして食堂の常連である、陸軍の飛行学校で学ぶ少年飛行兵たち。ただ純粋に飛行機乗りに憧れていた彼らですが、戦争末期になると、敵艦への特攻というとてつもなく重く過酷な運命を背負わされることになります。

私の居住地から一番近い陸軍航空隊関連の施設が桶川飛行学校平和祈念館なのですが、昨年訪れた際に職員の方とお話させていただく機会がありました。
桶川の飛行学校を卒業した飛行機乗り、彼らの多くも特攻兵となり、知覧や万世の飛行場から飛び立って行ったのだそうです。
中でも少年飛行兵たちはまだ十代、現代の高校生くらいの年頃です。その若さでお国のためにと散っていった彼らを思うと言葉になりません…。
そして、この物語では特攻兵たちを見送る立場の人々も描かれます。昨日まで笑い合って会話をしていた相手がもういない。親しくなるほどに、耐え難い辛さだと思います…。ヒロインである食堂の娘・栄子に感情移入してしまい、ボロボロ泣きながら読みました。

“戦争めし”同様、この作品は優しいタッチの絵柄と物語。戦争物初心者の方や苦手だという方にも、ぜひ読んでいただきたいと思えるお話です。
兵士である前に一人の少年であった彼ら。その屈託のない笑顔が心に残り忘れられません。
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