『精神科』のハードルを低くしてくれる、今の時代にこそ必要な医療マンガだと思います。
この作品のいいところは、偏っていないところだと思います。患者本人の辛さの描写はもちろん、家族や友達や同僚といった周囲の人たちの苦労も描いてくれるし、いい医者もいれば悪い医者(というか、合わない先生)もいることや、治療も合う・合わないがあったり、解決法もいろいろで、うまくいくこともいかないことも描いてくれています。
どのエピソードもすごく勉強になるし、知ることで安心できるような気がします。『自分がなったとき、こんな方法があるんだ』『こうなったら危ないサインかもしれない』『ちゃんと治療法や対策法があるんだ』と思うと、何も知らない時よりは戦う準備ができるのかな、と。
中でも印象的なエピソードは、障害者雇用を描いた回です。患者側の視点だけでなく、直接の部署の上司の視点もあって、綺麗事だけでない現場の苦労を見せてくれます。本来のバリアフリーやらインクルーシブやらは障害者や少数者だけでなく、誰もが生きやすい社会を目指すもののはずが、今はどこか・誰かに苦労を押しつけているだけに見えます。このエピソードのように、お互いが『楽』になる解決法を、面倒くさくても時間がかかっても見つけていけるといいなと思います。