若かりし頃に読んでインパクトの強かったSF短編集、300ページをはるかに超える大ボリューム本。パワープッシュになっていたのでレビュー。思い出補正付きの星5つ。
描き込みやレトロフューチャーなSF要素にワクワクした記憶。ちょっと女性キャラクターの扱いが「男性から見て都合のいい」感じがあって、キャラクターはそんなに好きにはなれなかったんですが、物語としていろいろと面白いです。
当時人気があったのは、この本の後半収録の『チャイナさんの憂鬱』シリーズだったと思います。
が、自分のお気に入りは『少年化學倶楽部』のシリーズ2話。
少年の心を忘れない(と言えば表向きには聞こえが良い)おじさんたちの宇宙へ向かう情熱やわちゃわちゃが楽しい。この話に出てくる「エーテル気流理論」という設定は、未だに私の中で強い影響があります。現代の科学では否定されてしまった「エーテル」、しかし「真空は完全な無」では光も何も伝わらないのではないかと感覚的に思っており、素粒子の研究が進んできた現在、当時の技術では観測できなかっただけで宇宙はやはり「エーテル」に満たされているという説が復活するんじゃないかと期待していたりする。そんな夢を抱くくらいに、エーテルの流れに帆を張って進む宇宙船には浪漫があるのだ!
もうひとつ、『リトルメランコリア』が好きでした。『くるみ割り人形』を下敷にした、切なさのあるタイムマシン話。