ネタバレ・感想あり羽ばたき Ein Marchenのレビュー

(4.9) 7件
(5)
6件
(4)
1件
(3)
0件
(2)
0件
(1)
0件
読了後ほぅとため息がでました。
2024年1月6日
ずいぶん前のセールで購入しそのまま積んでいた本作品、やっと読みました。
何だか神妙な気持ちで読み終えました。
普段あまり触れる機会の無い文学作品で、大切に読んでいきたいと思います。
美しい物語です。
いいね
0件
最高のコラボレーション✨
2023年1月11日
何かと稲垣足穂を引き合いにされる鳩山先生ですが、評論家でアンソロジストの長山靖夫先生が結ばれたご縁で実現した、堀辰雄の水晶のような短編のコミカライズです。このお話をマンガで描く人は鳩山先生以外はあり得ない!と私も思いました。

作品の解説は巻末にて長山先生がこの上ない理解力で素晴らしい文章を寄稿されているので、ここではお恥ずかしいレビューなどとても書けません。
ただ、原作には書かれていないけれども鳩山先生が堀辰雄の境遇に想いを馳せて描かれた部分に涙しました、とだけ。本当に造詣が深い……。

今作品は鳩山先生初の海外翻訳された作品でもあります。きっとこの作品を手に取ったフランスの読者にも素晴らしさが伝わっているに違いありません。この世界をこれほどまでに絵で昇華できるって本当に素晴らしいです。

作中の少年の名前がジジとキキ。
これは偶然ではないようです。
宮崎駿さんは(角野栄子さんも)やっぱり堀辰雄が大好きなんですね。
芸術の域
2022年6月14日
少し前にセールにて購入しました。
堀辰雄『羽ばたき』を鳩山先生がコミカライズした作品です。

巻末に原作も収録されています。
本編の素晴らしさ。原作の素晴らしさ。
原作をここまで表現出来るのかと驚かされ。
原作の世界を味わいつつ、鳩山先生の世界が原作を共に昇華させている事に言葉を失いました。
原作に忠実でありながら、それぞれの良さをお互いに増している事が、本当に奇跡のように素晴らしく感じました。

表現力というものが持つ凄みに圧倒されました。
漫画というより、芸術的。

お値段お高めですが、その価値は十分にあります。
解説含め、読み応え抜群です。
『寝台鳩舎』も、是非読んでみようと思います。
旧字体旧仮名遣の原作も。1粒で2度おいしい
2022年5月21日
これは本当に人の手で描いたのだろうか。夥しい描き込み。一体どれだけの時間がかかったのか。数えきれない程の数の鳥が空を覆って飛ぶ。他を圧倒する黒がたっぷり使われて、独特の空間があって、鳥の羽音(千羽の?)が効果音に頻繁に使われているのに、静寂さえも感じてしまうU塔周辺と夜のひと気の無さ。塗り籠めたような筆感でない細い何本もの線が原稿の地に入れられて、中身の向きや厚みを加えている。何本もの線はペン画タッチを成し、アート色濃くて、私のような俗物をひるませる。台詞の無いコマも強い瞳や甘さの無い絵で訴えかけてきて気圧されそう。そしてかなり枚数を絞ってきている各コマの中でキャラ達の感情は抑制され、一方では「死」が黒や夜より全体に影響を与え続ける。一種の重さが終始あることが主人公の発散されない感情のよう。断片的な描写を繋ぎ合わせて出口探し。束の間の明るさ。映画「ジゴマ」に魅了されジゴマ「ごっこ」をする子ども世界の象徴シーン。変装という手段で奇妙な「自由」を味わう主人公ジジに私はヒヤリとした。少年達の世界は大人達世界とはパラレルにあって、しかもなお、ジジのやっていることは大人の世界に抵触する。冒頭の黒を途中の白で打消そうとする感じ。同じ町に居ながら両世界は異質。ジジに特別な想いを寄せるキキ(名前!!)。シュールな印象の絵面で、日常ではない=夢を見ている錯覚を起こす展開の中で、遊園地は日常と夢の狭間のよう。羽ばたきは鳩のもの?それだけではない。存在アピール、飛翔への繋がり。
存在を忘れられたジジが鏡に映される場面には凄みを感じた。実像を歪ませ誇張し奇妙に複製する鏡。
可愛い可愛いの絵ではなかった「鏡の国のアリス」を連想してしまった。
憧れた鳥の羽ばたきに、人は追い付けない
2022年5月19日
堀辰雄の短編小説「羽ばたき」を、鳩山郁子の細部まで行き届いた美麗な筆致でコミカライズした、贅沢な一冊。服装、小物、演出、随所に目を瞠ります。憧れて、追いかけて、でも決して追い付けない……そんな鋭利な切なさと美しさがあります。
小説を見事に視覚化しただけでなく、鎮魂歌のようなラストシーンなど独自に加えられたシーンもあり、堀辰雄の作品であると同時に鳩山郁子の作品になっています。フェアリーランドでのキキとジジのすれ違うシーンも独自に加えられた部分があり、私的にはそこがとても切なく、気付いたことに気付いていたなら、と思わずにはいられません。
また、あくまで堀辰雄の世界が下敷きになっているため物語の道筋があり、鳩山作品中では比較的すんなり読めると思いますので、ガロ系に不慣れな方にもおすすめです。
巻末には原作小説も収録されているのが非常に優良、しかもちゃんと旧字体なのが最高。解説も含め、隅々まで読み込んで「羽ばたき」の世界を楽しめる、素晴らしい一冊です。
美しい
2021年10月7日
おすすめされて拝読。
漫画にしてはお高い金額ですが、芸術に払うなら安いもの。ひとこまひとこま素晴らしいです。原作を読んだら再読してみます。
怪盗ジゴマの時代
2023年11月6日
普通の漫画とはちょっと違った雰囲気のストーリーと表現、絵画のように美しいイラストだったので、不思議な気持ちで読み始めましたが、文学作品のコミカライズと知って納得。
子供の気持ち、大人の思い、時代や風習も確立されていて引き込まれます。
小説や活字が苦手な人にも読みやすいように敷居を下げ、でもクオリティは落とさない素晴らしい作品に仕上がっていました。
それでも、現代の分かりやすい普通の漫画に慣れてしまった読者には、ちょっと難しいかもしれません。
いいね
0件
レビューをシェアしよう!
作家名: 鳩山郁子 / 堀辰雄
出版社: KADOKAWA