山の中で一人で倒れていた男は目が覚めると記憶がなくなっていた。助けてもらった少女とその祖父と過ごすうちに、真実と過去の記憶に近づいていくお話。
話の展開がとにかく面白いです。コウと同じように全く何も分からないところから話が始まり、過去の記憶のフラッシュバックで何やら不穏な展開を想像させ、近づいてくる過去の知り合いは怪しさ満点。コウは何者で、何を考え、何をしたのか。真実に近づく程、様々な人物の思惑が混入し真相が掴めなくなっていく展開はサスペンスとして非常に良くできています。
最後は少々詰め込みすぎな展開でしたが、そう感じるのも無理はありません。裏切りに次ぐ裏切りの連続でやっと一段落と思ったところで、ようやくコウの本心が語られ始めます。それは、誰の味方でもない彼の孤独な闘いでした。そして、それを一番理解したのは、彼が一番憎んできた茜の娘、安ちゃんでした。結局、子供の純真な気持ちを利用してきた大人たちに対する子供の復讐劇だったのでしょうか。サスペンスのお話の最後で感じるのが安堵ではなく、切なさであるのが胸が痛かったです。