昨今のヤンデレを扱った作品によくある、最初から病んだ状態で描かれるといういまいちなことが多いパターンではなく、一見まともそうから始まって徐々に病んでいく、あるいは病んでいる状況が判明していくという流れの、個人的にはお手本にしてもいいくらいのヤンデレもの。
そもそもヤンデレというのは問題が発生しなければ愛が多少重くて独占欲とか嫉妬心が強め、ぐらいの人物のはずで、最初から異常行動をするようなキャラクター造形では決してない。この作品はそれがよくわかっておられる。
一部のサブキャラクター以外の主要人物がことごとく病んでおり、ヒロインも例外なくかなりずれた感覚を持っている。それも歪んだ環境で歪んだ教育を受けて歪んだ人物関係の中で育ったためで、唐突に理由なく異常さを押し付けない感じがして良い。他のキャラクターも素質こそあったが病む原因となる経緯がきちんと描かれている。
久しぶりにヤンデレをきちんと魅力的な物語として描いた作品を読んだ気がする。