ヒロイン(フェデリカ)は孤児で平民、そして「色無し」と社会的ハンデをいくつも背負っています。中でも「色無し」はゼーガ神殿の教義により「精霊の加護が無い=色無し」として虐げられる存在。
それでも挫けず治療院で治癒魔法士として実直に働く日々。ある日、王命で婚姻を命じられます。貴重な治癒魔法の血を途絶えさせない為だと聞かされます。夫となる騎士(伯爵三男アルマンド)は、顔合せもないままに、参列者もなく、お互い制服で挙式。ヒロインは「さっさと子を授かって離婚してあげなくては騎士様もお可哀想」と誤信したまま婚姻生活に進みます。
ヒロイン、憐れです。理不尽な差別にさらされ続け、諦める事が身に付き過ぎています。特に破瓜の話しは本当に非人道的、さらっと語られますが、胸の潰れるような出来事。しかしこれが納得出来てしまう様な社会的背景があり続けます。そして子供を授かるだけの婚姻という誤信も解けることがありません。
ここは夫が頑張らねばならぬところですが…優しいものの、朴念仁、いつも言葉が足りなくて、行き違いが解けるまでにいたりません。ヒロインは経歴を考えると、やむ得ない部分があるので、夫のコミュニケーション不足に、少しイライラさせられます。
それでもヒロインに対する思いは真剣で深いものがあり、時間の経過と共に改善していきます。それにとてもいいのは新婚新居の使用人達。良識があり、主人に諫言を述べられる真の忠誠心があります。そして気配りと思いやりに溢れていて、未熟な若い夫婦を助けます。
14巻で出産を終え、15巻から第二章に入った感じです。わりと気軽に読み始めましたが、差別、偏見、女性の社会的地位、格差社会など重いテーマがずっと根底にあり、実社会についても考えさせられます。
ヒロインは芯が強く、問題に立ち向かう賢さがあります。夫の方も家庭環境に軋轢あったりで、順調なばかりでない。そんなふたりが、まわりの人達の力も借りて、どう成長していくのか?そして厚みのある背景が魅力の作品です。