ヒロイン(貧乏男爵令嬢ベル)は、突然ヒーロー(公爵令息アレン)の婚約者として披露されることになります。どうして自分が選ばれたのかは見当もつきませんが、実家の借金全額返済と領地への支援を見返りに示され、了承します。
その日その場で初めて会ったヒーローは、ニコリともせず、婚約は形だけだと言い放ちます。ヒロインが自然な親愛の情を示しても、冷たい態度で返します。ヒロインはここで腐ったりせず、あくまで自然体で自分の果たすべき義務に真摯に向き合います。
ヒーローは自分から相手を突き放しておきながら、序盤からヒロインの事を気にかけます。ただヒロインはいい意味で鈍感で純真な心根、他の令嬢からの嫌味にも気付かずスルー(悪意に気付く事が出来ない)受け止めのポジティブさは周りに波紋が広がるようにいい影響を与えていきます。
ヒロインの健全さを支えるものは、実家や領地で受けていた家族愛や互いへの親愛です。贅沢は出来ませんが、主食の芋類の収穫や、工夫を凝らした調理など金銭に変えられない喜びや幸せに包まれて育ちました。
ヒーローの方も家庭愛に恵まれなかった為、やや拗らせた面はあるものの、冷徹さなどありませんし、むしろ相手の立場を思いやれる思慮深さ、細やかな心配りが出来る誠実さがあります。その隠された長所が、ヒロインによって解放されていきます。
早い段階で“両片思い”状態で、ジレジレなのです。ヒロインにほだされるヒーローですが、その為、最初の適当で投げやりな行動が支障をきたしてきます。ヒロインに貴女を選んだ理由は「くじ」でしたと言えないのです。失望を恐れる程にヒロインに惹かれているのでした。
主人公ふたりとも可愛らしい。両片思いが両思いに変わるまで、道のりは長そうです。無責任とも言える方法で生涯の伴侶を決めましたが、その「くじ」は、幸運!互いに運命の人を引き合わせるものだったと言えそうです。ふたりが幸せに包まれるシーンが待ち遠しいです。