私のはじめての暮田先生です。優しい画、色合い、溶かすような笑顔、ほっこりした会話…すっかり惹きつけられ他の先生の作品を探して…そして購入したものの、読み終えるまで時間を必要としました。皆様御存知のように暮田ワールドは優しさの裏に影が潜みます。歪な愛情や、滲みる傷もありました。やはり受け入れられないものもありました。たかが漫画、されど漫画。外部者の私達も影響は受けます。そして戻ってきたこの作品。暮田先生初レビューはこの作品と決めました。
まだ1巻なので、今後暮田ワールド発動するかもしれませんが、本当に初々しいお話です。苦労人の優しいお兄ちゃん鴇ちゃんと格好良くて才能もあるのに不遇な状況にいる尭良くんの出逢いと、お互いがはじめてをはじめていく、始まったばかりの2人のお話。11歳の時に父親が亡くなり、世間知らずの母親と幼い弟達のために早く大人になった鴇ちゃん。鴇ちゃんは(全てを)惜しみなく与えるくせに受け取ろうとしない。それは性質でも美徳でもなく「傷」だと気付いた尭良くん。家族の状況が好転し、感謝され戻ってきた自由も安心も、これまでの自分を否定されるようで怖い、と口に出せた鴇ちゃん。隣で微笑んだり寝顔を見せる鴇ちゃんにこれがオレの「はじめて」だと、初恋だと気付き、オレも変わらなくちゃと行動を起す尭良くん。こんな静かで切なくて暖かなエピソードが積み重なって、この1冊を形作っています。
鴇ちゃんの兄弟達も魅力的。彼等のスピンオフも欲しいくらい。これから尭良くんの毒親とか、絡んでくる同級生とか、芸能人と一般人とか波乱は起きそうだけれど、2人には「はじめて」を、沢山沢山はじめて欲しい。そして私はそれを見つめて幸せな気持ちになりたい。
たかが漫画、されど漫画。暮田先生、様々な気持ちを味合わせて下さって有難うございます。物足りないなんてありませんよ、絶対に!!
読み終わったら、日々が(オーバーかな?)ちょっと淡く色付いて見える、そんな素敵な作品です。