数奇な運命を余計数奇にさせた出生の秘密のエピソードなど、ドラマを盛り上げる材料豊富。ヒロインが王女である必然性が感じられず、ヒロインのバックグラウンドは一切触れられず(話題にしてるが、話の内容を決定的には方向付けしない)、権力も富も活用されない異色の筋運び。少々スピリチュアル?、な活劇仕立てを見届ける。彼ウルフのエスニックバックグラウンドの異色ぶりがストーリーの主軸に据えられている為、そこに興味のない人もいるかもしれない。
橋本先生の男性はもっと野性味発してると思ったが、教育を受けた知識階層に入った人間だからかおとなしめ。
話の中では次々何かしら起こるのに、読み手を引き込む引力は強くない。話の起伏にドラマを感じる臨場感があるとよかった。
この結末、映画でみたことがある。全く外見が違うのにどこか懐かしさを、何故だかわからない引っ掛かりを覚える二人。
時代を越えて、生まれ変わる魂はやはり同じ人を好きになる。そんなところは、描き方は同じ。まるで別人なのにすれ違うだけで、何かを感じる。
運命だな、と。そういうファンタジー部分が私は好き。なにかに導かれるように、強く引かれ合う。理屈を越えた感情。生まれ変わってもあなたが好き、というところが、HQの中の私の気に入っている強いロマンス成分が発揮されているところだから、アニメ「君の名は。」にも通じる巡り合わせの不思議さ。
それにしても、ネイティブアメリカン(ここでは原作と翻訳の味わいを忠実にするため、異なる呼び名を使用)やジプシーなど、リアリティはさておいて、抑圧された民、居場所を奪い取られた民を掬い取って意欲作。
「金色に輝く快感が体にしみとおってくる」との表現に揺さぶられた、
他にも印象的な言葉が散りばめられていた。
居留地でのナバホ族の室内の数々のラグの柄を見て、アリゾナに行ったときの事を思い出した。まさにあんなような柄が沢山店に並んでいた。髪型や顔立ちだけでなく、環境描写の処々に「らしさ」を存分に出している。この作品の舞台装置をそれらしく見せることの出来る力量がある先生が漫画化担当で、本当によかった。儀式のシーンなど、HQにしては毛色がかなり変わっているけれども、視覚化の腕は確かだ。ハーレクインコミック作家の中で、表現力が最高レベルの一人かと思う。
タイムトラベルものは、私が好きなジャンル。
評価は甘く付けさせてもらった。