この心理、公爵のような過去がなくてもありますよね。遊んでいる人の年貢の納め時というパターンよりも、ほんの少し彼が別の事情も抱えていたというわけです。「恋を忘れた」とのタイトルが誤解を呼びかねません。
ヒロインは公爵とはもうやめたつもりということなのに、当人たちわりと近くで曖昧にふらついていて、挙げ句「相談」だなんて。
恋の相談は、好きな人に近づく女の常套手段のはずでしょう。
クララが彼にぶつかってみたのは一年半前との設定ですが、一年半なんて普通は乗り越えられない短さです。そう、当人の認識通り、もう大丈夫だなどと思うなんて、確かに甘い気がします。
つまりは一途に一人の人を好きで居続けた、そういうストーリーで、外見はそうではないと振る舞い続けた二人。
誰のものにもならないモテ男 実は心の痛みを隠し持って結婚に背を向けていました。
ヒロインはその人を好きでいたことが報われて良かったね、としか言いようがなく、お義姉さんのキャラとお兄さまのポジションがヒロインへのブレーキ役、執事さんは背後からの、あと押し役。
なんだか一日中貴族の子女は遊んでるのだなーとの思いが残りました。
でも、氷の裂け目から救出する場面、ヒロインが助かって良かったと公爵がギュッとするシーンは、公爵がヒロインをどんな風に見つめていたかを明確に説明しているところです。此がなかりせば話にしまりがありません。全編がバックなどの細部まで入念に表現されている、碧先生の気合いを感じられる筆致が、纏まりの悪い話で台無しになるところでしたから。
だだ、氷の割れたところから落ちるのは実は簡単な救出ではないはずで、こういうハプニングにヒロインが簡単に近寄っていくのか、との疑問も。
噂とならないように男性と一緒に居るところを目撃されないように慎重にしていながら、その一方で
過去には相応の交流がふたりにはあったとの設定です。いまの方が年頃故のスキャンダルに発展しかねないとはいえ、19才当時の年齢でも、醜聞の当事者になれない年齢というわけではありません。
当時の二人の行動、今回の二人と比べてどうだったのかを、説明してくれてない気がしています。
でも好きな人と結婚できるという結末を信じて読むHQですから、クライマックスで公爵がヒロインに対する秘めていた好意を語ってくれた場面に至って、やっとここまで来たか、と思うわけです。