「華やかな嘘」は、男性不信になっていいヒロインの傷心が、辛さが、悲しみのどん底へ幸せな気持ちからの落差が、ヒロインに代わって読み手のこちらに怒りを覚えさせる。
怒りまだ収まらない読者のこちらを置いてけぼりにして、思いやり溢れるヒロインは、彼の境遇への共感によって、余りにも簡単に、閉ざした心を再び開いてしまう。
短編の舌足らずのような甘えを排除するには、彼の行動の背景への読み手の理解を進めるために、もう少し早めに環境の説明を打ち出すべきだったように思う。
それにしても、メディアのフラッシュの放列に気づかないなんて、隠しカメラでもない限りあり得ないだろう。
「翡翠色の裏切り」は、筋立ては前半の「華やかな嘘」より遥かに練られているのだが、ヒロインの行為はやはり犯罪行為と受け止められても仕方がない為に、実はそうではなかったと、いくらあとから辻褄合わせしても、それは、どんでん返しというより、ヒロインを罪人にしたくなかった作り手の意図が働いているとしか見えない。
口に出来ない、とある事情が背後にあって、したくないことをさせられる、そんなストーリーはHQに限らず使われるため、新しくはないが、このドラマもヒロインの哀しい事情が終始匂わされ、理解できなくはない。
私がつい行けなかった点は、国王の登場の仕方や振る舞いの軽々しさ。狂言回しとしても、その割にストーリーにポディブローの如く不信感を煽るうっとおしさ。しっかりレポートする調査機関が付いていながら国王自ら出てきて、国王の存在意義がどこにあるのか解らない。他の登場人物たちが出てきてもキープレーヤー感はない。それなのに、ヒロインにお金をたかった悪人も姿が見えることはない。結局メイン二人以外の誰もが何となく居てストーリーが進んでしまう。
両作品ともに、アラブやロイヤルファミリーみたいなところを扱っているはずなのに、それらしい描写も服装と恋人を呼ぶ時くらいにしか現れず、私がこの手の味付けに感じる中途半端さがおここにもあった。
どちらも、愛してる、という言葉が時々空虚に感じて、裏打ちするほとばしりを絵かシーンで見せてほしかった。