軽く簡単な感じがしてしまうが、甘くコーティング、ちょっとサワー、ちょっとビター、それぞれの登場人物から見える景色さまざま。でも、恋で作品のどのパートもキラキラした感じ。気持ちに気づいたり、温めてきたり、届かなかったり、通じたり。さらりとした筆致ながらも何故か繊細さも出して、彼らの広くない世界に感情の深まりが描かれている。オサレでキュートで、センスがいい感じが溢れてる。学校生活自体少し漫画上の特殊設定が、感覚をリアルな日常からちょっとだけ切り離す。
サッと作られたように感じてしょうがない作風だが、どのコマも沢山描き込まれ、実は感覚ほどには見た目は手抜きには見えない。作品の軽さは、浅さではなく、書名や各回の副題の雰囲気ととても合っており、明るさと楽しさに通ずる。頁数を考慮すれば、健闘している。但し、ストーリーの組み立てを思うに、ここまで大勢を出す必要はあったのか、なんだか、この形式でどこまで頑張れるか、挑戦に付き合わされた感はある。実験的な作りを受け入れられるかどうか、評価はそこで分かれるだろう。私は、この半分の人数で、最終回の外にもう一回ずつ登場回を設けてくれた方が、作品世界にしっかり入れた気はする。
ところが、登場人物が多いことを問題視しているレビューが溢れているのを読んで、ついつい「ボクラノキセキ」という、この比ではない人数(しかも現世と前世の2倍)の漫画を思い浮かべる。あれはその人数規模で面白いのだ。
この「シュガーズ」の巻末相関図ー2巻以降ーは各巻の内容限りに於いて最小限では役に立つ。読み進めるとき、既読部分のストーリーをもう忘れてしまっているのが大いなる難点だ。
だが、そこまで全員の人間関係を完璧に把握しなくても読める。やまもり先生はドラマ作りを心得ていて、終わり方が各回巧み。それに各巻の表紙がまた楽しめる。
1巻目など序盤から描線も多くて、むしろにぎやかさがうるささに繋がってしまいそうな印象もある。しかし、徐々に整理された線だけになって、巻を追う毎に洗練の度は増していく。
同時収録の別作品あり。
4.2-4.4のつもりで。
「椿町ロンリープラネット」をこれから読もうかどうか実は迷っていて、こちらを10年ぶり近く位に読み直してみた。
結局読了後も依然として迷っている。