相手が自分にとってどんな人なのか。自分にとって相手はどんな人なのか。
思い描いていた結婚生活、それは理想の条件に合うかもしれないけれど、その人である理由のなかに、相手でなければならないというのはどんなことなのか。
そんなに何人も結婚しようとなる人が人生現れるものじゃない。
結婚するはずだった二人だって、お互いの想定の結婚生活の上ではちょうど合うピースだったのかもしれない。
問題はやはり、愛しているのか、の大切な一点。
式前にハプニングにより知り合うことになった彼の方を、ヒロインは愛してしまった。これ、婚約者がゴミだったから良心の呵責もそれなりに飛ばせる問題だったが、仮に婚約者不在の状況が不実行為によるものでなかったとしても、婚約が愛情中心に成立していたと言えなかったのだから、遅かれ早かれ心を寄せてしまう相手は出現しただろうと思う。其だと事態はより辛いことになっただろうがー。
きっかけとなるハプニングの方は、それ自体ユニークで先の読めない味付けになっている。事の成り行きを左右するから、面白くストーリーが展開したが、続発する悩ましげな小規模事件が彼をいちいち挑発してくる。その辺、楽しいコメディなのだけれど。二人が特殊な状況で狭いところに閉じ込められるお馴染みパターンの中での、相手を意識してしまう小イベントのひねりかたに関して、微妙にリアリティが足りない感じがしてしまう。お話は作り物であっても、その性質上、ありそう、あるかも、という点に読み手の自分が同調できないと堪能できない。ヒロイン、危なっかしさのレベルを軽く越えた扇情的行動に無自覚。ちょっぴり作劇のいやらしさを感じてしまう。
二人の節度が次第に緩まるさまは方向的には歓迎なのに、なぜか少し白ける気分が混ざってしまう。接触と躊躇にある心の葛藤のほうが男性中心で、反面、物語は女性の方の展開に比重がかかっているために、事実描写への想像力をベースにするしかなくなってしまい、女性の気持ちの揺れや、男性のスティーブとの関係の距離など、あれこれ余計な事を思いめぐらそうにも、事柄が起こっていくだけ。共感を抱く前に読み終わってしまう。
展開の面白さだけでいいではないかと思ってもいいが、それだけ、ともいえる。
支配人は仕事柄が人をよく見ているというキャラで、役目は異なるものの映画プリティウーマンが頭に浮かぶ。
45頁誤植が興ざめ。