試し読みで興味がわいて購入したのですが、ここまでハマるとは思わなかったです。楽しく笑っている間に伏線が張り巡らされていたことに全然気付かなかったので、ラストにかけての怒涛の展開に息をするのも忘れる程、夢中になって読んでしまいました。
平安時代の生活をそのまま現代語訳したような感じで、歴史のことに疎い私には、平安時代の生活文化を現代の感覚でイメージできて凄く勉強になりました。現代人のように話すのでニュアンスを理解しやすい上、ちゃんと視点は平安人なので、目の付け所の違いにハッとさせられて新鮮でした。現代の強い刺激に慣れてしまった私にとって、昔の人達の、僅かな変化に心を寄せて愛でる姿勢は、とても魅力的に見えます。あと、これは作者様の技量の成せる業なのかもしれませんが、何気ないふとした瞬間に、そこはかとない色気が漂っているんですよね。こういうエロチシズムの表現って素敵だなぁと思いました。特に印象的だったのは、ラスト近く、恐らく眠れないまま朝を迎えた亨が、寝巻姿のまま外を窺い、朝の光の中佇む姿でした。彼らしい穢れない純粋さの中に男の色気を感じました。それまではDKみたいに子供っぽく見えていたけれど、そこまでの過程でしっかり大人になる階段を一段ずつ昇ってきていたことに気付いて、「今までのあれやこれやは、ここに繋がってくるのか~!」と作者様にしてやられた感が半端なかったです。
登場人物が端役に至るまで全員存在感があり、しっかり物語の一部として役を担っているところも素晴らしかったです。どのキャラも愛おしくて、どこか身近にいそうな感じがするのも良いです。それに、綺麗で分かりやすく見やすい絵柄で、人物や表情の描き分けもしっかりなされており、とっても読みやすかったです。読み返す度に、キッサン先生の才能に圧倒されます。こんな出会いがあるから漫画読むのを止められないんですよね~。あ~、幸せ。