「いぬやしき」はつまらない。
そう決定的に感じたのは、3巻の「やくざ」シリーズだ。
弁当屋の女の子が、やくざの鮫島に襲われるエピソードだが、このシリーズ第1話は完成度が高い。
いきなり登場した鮫島というキャラクターに、背筋も凍る不気味さがあった
「ウシジマくん」の滑川さんだって逃げ出す、強烈な「悪」だ。
このキャラクターを使って、誰も見たことがないような、無茶苦茶な展開だって描けたはずだ。
しかし、作者はそこへ踏みこまなかった。
強烈な「悪」を登場させておきながら、彼を使い尽くさなかった。
そして、訪れるあまりに凡庸な結末。
アイディアが浮かばなかったのか。
それとも、浮かんだアイディアを使えない事情があったのか。
いずれにしても「やくざ」編は、キャラクターは奇抜なのに、お話は凡庸。
それはそのまま、私の「いぬやしき」という作品全体への評価でもある。