神が題名にあるのは、目はどこにあり誰から注がれる視線であることか、ということなのかと思う。関係性の潮目の後の主人公は、陽と陰とを一手にして、内なる冷ややかな存在が外に向かう自分を抑えまた内にこもり続けることも許さない。自分の望みやかねてよりの憧れ、彼女のものだった願望。
「ラーギニー」と「酔夢」はグルっと巡ってひと回り、みたいな宇宙空間の輪廻転生的な感じがした。「スロー・ダウン」はいかにもSF的な感じで、実験の目的から実験室外に飛び出し拡大する実験自体がまるで命を持ったよう。「ハーバル・ビューティ」、出自に主人公以外から見て特異性があることがストーリ-に変則的な経過を与えて、なんだ、結局は、という感じ。「偽王」、因果は砂の中に飲まれて、あっけなくなってしまう。「偽王」と「温室」とがSF要素よりファンタジー的で、読み手のこっちは何とかならなかったもんかなという、手のとどかない展開をただ目撃させられる気分。「左ききのイザン」、先生が著した小説「ヘルマロッド殺し」の後日譚だという。あわれな男がひとり。「真夏の夜の惑星」は、連想されるシェイクスピア劇があるようにインスパイアされたとわかる話。比較的明るくて、そこに先生の宇宙物というアレンジが面白い。「金曜の夜の集会」、ちょっと前に流行った感のある、とあるコミュニティの謎。「ラーギニー」、「酔夢」、「ハーバル・ビューティ」、「偽王」の絵が特に筆が沢山入っているように感じてじっくり眺めた。
奥付含めて全307頁。
「半神」(プチフラワー84年1月号)「ラーギニー」(SFマガジン80年2月号)「スロー・ダウン」(プチフラワー85年1月号)「酔夢」(イラスト集"金銀砂岸"80年)「ハーバル・ビューティ」(ぶ~け84年10月号)「偽王」(プチフラワー84年9月)「温室」原作イケダイクミ(75年5月-セブンティーン6月号)「左ききのイザン」(78年SFファンタジア4号)「真夏の夜の惑星」(プチフラワー90年11月号)「金曜の夜の集会」(80年11月SFマガジン臨時増刊号)