どうしてもキャリーを手に入れたいなら「嘘」なんていくらでも言えばいいものをそうしないテオ。会社を買収して解体して売り飛ばすなんてやっている男性とは思えない誠実っぷりには”以外”と言える。「愛」というものがどういうものかなんて誰も知りはしないのに自分には不必要だなんて頭が良いのか悪いのか自己評価が出来ていない。自分自身が癒され居心地の良い家庭に縁がなかったからこそそれを求めている深層心理に気付いていないだけだった。ただ、コミカルに描かれている割に、コミカルさが少々不足で、例えば、P60のテオのセリフ「効いてくれなければ、困る」というところは、活字の転用ではなく筆者の手書きでもう少し大きく書くほうが効果的。そういう効果が御座なりにされているところがポツポツと目に付く。だが、無理無理ハピエンにもっていくHQの数々の中でも、わりと自然に展開していくのは読後感の良い物語だった。これから何度でも読み返したくなる1冊となった。