ネタバレ・感想あり四谷区花園町のレビュー

(5.0) 6件
(5)
6件
(4)
0件
(3)
0件
(2)
0件
(1)
0件
美しくて優しくて愚かな市井の人々
ネタバレ
2023年10月1日
このレビューはネタバレを含みます▼ 新宿大通りを一本はいったあたりの、四谷区花園町。大正の終わりから昭和にかけて、人生を駆け抜けた市井の人々の自由な熱気にあてられ、身体の火照りが消えてくれません。
花園町で友と青春を謳歌し、恋を知り、時代に翻弄されつつも愛する人と共にいる喜びを噛みしめ、大切な人を守るために決断する、至心(イシン)という魅力的な男性の半生。一度きりの人生、好きなことをして楽しく生きた方がいいと、短いながら全力で生きた人生の追体験は、美しくて優しくて愚かで、胸がいっぱいになりました。
いのちをつないで、今の自分がある。どうしようもなく、日本人であることも意識しました。
一巻通して日本の湿度感が感じられる絵。
そして、至心とあきちゃん、お互いを描いたデッサンが違和感なく二人の部屋に飾ってあって、目が釘づけになりました。高浜先生、天才だなぁ。
良かった
ネタバレ
2023年9月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ 全く知らない作家さんだけど、口コミみて購入。
イシンの戦前から戦中の人生劇場で、暗くないところが良かった。でも、電車の中では読んではいけなかった…
この時代の空気を感じる
ネタバレ
2023年1月5日
このレビューはネタバレを含みます▼ 作者買い。「ニュクスの角灯」ファンです。
こちらも最高でした。エロ雑誌の編集長とライター二人が取材へ赴き、各所で女性とお近づきになるという戦前の風俗道中かと思いきや…微笑ましい純愛に舵を切り、アカ・エロ・宗教が取り締まられる期を経て大戦に突入。胸を打つドラマが屋台骨にありながらもたっぷりとこの “時代” の空気を感じられます。そこが堪らなく好き。
最後は後世の人間がオチを語るという締めくくりで、”最初は戦前のエロ業界に咲いた鬼才の話かと思った“ と言っていたのには笑いました。自分もすっかり騙されてた。
皆が皆ハッピーエンドとはいかない現実的な結末は、残された者が幸せを模索して今に繋いだのが想像され胸アツです。
高浜先生が実在の御身内をモデルにされたという後書きも興味深かったです。発禁書「性の扉」読んでみたい。
エロって人間の生きる糧よ…。
2022年12月11日
いい話です。男が女を愛する時。女が男を愛する時。その濃密な時間がエロいのも良し。素朴なのも良し。それらがつづら折りのように重なって続いていくのが一番良し。そして【いい話】とは感動するだけではない。気持ちを揺さぶられ、悔しくて、怒りが沸々と湧いて、それでも生きる事の尊さに共感して魂が震えるような。イシンの体温と吐息をずっと感じる事が出来るような。これはそんな別格な【いい話】でした。
☆という評価に躊躇してしまった
ネタバレ
2022年8月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ 惹かれ合う男女が居たならば、幾度となく描かれてきた普遍的なものであるように思うのに、こんなにも心を揺さぶられる。

コミカルな導入部分、アキとの出会いから始まる恋。
その流れが映画の様に秀逸で、登場人物たちは実写を見ているかの様に生き生きとしていて引き込まれる。
実際のページ数に、読後驚かされる。

軽快な読み心地と反して、感ずるものが多すぎて。
心がいっぱい過ぎて、言葉がこぼれ落ちてしまう。
上手くレビューできないけれど、感じたままを言葉に残しておきたいとも思う。

私が思うところの恋、愛、契り、そして想う心が描かれていたと思う。
それが美しく尊いことだと改めて知らされた様な。
これ以上に美しく尊いことが、この世にあるのだろうかと感じてしまう位に。
だから☆が幾つだとか、そういう気持ちに全くなれない。
まるで映画の様な
2021年1月27日
独特の世界観に易々と引き込まれる不思議な魅力が詰まった作品です。
まるで、その時代に生きてるかの様な、登場人物が実在の人物であるかの様な、素敵な錯覚を楽しむことが出来ました。

一本の映画を観た後みたいに、切なさや郷愁に満たされています。
作者のご親戚をモデルにされてるという後書きを読み、深みの理由が分かった気がしました。
いつも素晴らしい作品を描かれる作者さんです。
レビューをシェアしよう!
作家名: 高浜寛
出版社: 竹書房