甘い水
」のレビュー

甘い水

松本剛/板垣久生

地方のリアル

2018年6月17日
最近ふとしたことで松本剛という作家を知り、絶版となっていたらしい本作を読むことができた。「伝説の名作」的な扱いだったこの作品は、実際その評判に違わぬ読み応えだった。
東京のような都会よりむき出しの暴力性に歪んだ地域社会に擦り潰されるあまたの少年・少女の存在が現実にありうるだろうことを、地方出身者としてこの物語は端的に確信させてくれる。
読後感はひたすら黒く、重い。その中でもあふれんばかりに漂う詩情…著者の作品についてよく評されるとおり、これはもはや「純文学」といっていい。
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