このレビューはネタバレを含みます▼
誰もが1度は思う、大人の心を持ったまま子供時代をもう1度やり直してみたいという願望をそのまま体現したような作品で大満足です。SFやファンタジーは苦手で滅多に読まないのですが、タイムスリップそのものよりも17歳の身体を拝借した31歳の久我山が大人の心のまま高校時代を追体験するという独創的な展開が面白かったです。全く同じ世界を見ているのに17歳と31歳ではあまりに視点が違い、年輪を重ねたからこそ見えるものもあるよねと共感できました。一つの身体の中に存在する2人の自分。混戦する2つの感情はもつれ合いながら後半へと進みますが、31歳の久我山が当時の先生達や17歳の自分を客観視している冷静さがツボでした。経験を重ねた大人のずる賢さから悪印象しかない久我山でしたが、遅まきながら初めての恋に溺れ自分の生き方を省みる過程が良かったです。31歳の久我山にとって、年下でも曽根はやっぱり先生なんですよね。