けものあそび
」のレビュー

けものあそび

もちの米

補い合う二人の関係性がしみじみと良いです

ネタバレ
2019年7月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ 母親がいながらその母親に一旦捨てられ、手に入れたいものは暴力で得ることが習い性になってしまった将輝と、同じく、父親はいるものの真の愛情を得らえぬままピアニストとしての将来を強いられて育った翼、共に自分の感情を素直に表し解放したことがない二人の恋を静かな筆致で描いた秀作。

僕のおにくちゃんのスピンオフ。
将輝は前作では千明の元カレのキレた暴力男として登場しますが、その表情(前作ではヘラヘラしてました)や存在感に何か感じさせるものがあり、こちらのスピンオフも購入。

今作では常にほぼ無表情の下の将輝の心の動きがジリジリするくらい微かに波立ち、翼への感情が育まれていく様が暴力を間に挟みつつも切なく心に沁みていきます。おにくちゃん共々両方読んで損はないと思います。

コーちゃんと千明も仲良く登場し、うまく今作の二人の過去や現在のストーリーをつないでいってくれます。

考えてみるとコーちゃんと千明はとにかく親の愛を受けて育った者同士。対して将輝と翼は十分に親の愛を感じられずに育った同士。それでもどちらのカプも相手との出会いで自分が変わるきっかけを掴めた。うーんやはりこれは両方の作品を読んで欲しいですね。

この作者さんを知ったのがこの二冊だったので、後書きを読んで胸が詰まりました。
Twitter を見ていたら、どうも連載中に編集部からもっとBLらしい絵柄にするよう求められてモチベーションが保てなくなったようですが、これほどに才能ある作者さんが休養を十分にとられ、また新たな作品をいつか携えて戻ってきてくださることを心から願っています。
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