薫りの継承【上下巻セット・単行本未収録イラスト付】
」のレビュー

薫りの継承【上下巻セット・単行本未収録イラスト付】

中村明日美子

この作品の事で頭がいっぱいなまま・・。

2020年6月15日
同級生シリーズにはまり、次に絶対読んでみようと思っていた作品。読み終わってすぐにレビューを書ける作品ではなかった・・。それぞれの、登場人物に思いをはせる。兄も弟も妻も要も、それぞれが言えない思いを抱えていた。どうして、兄は弟に嫌っていると思わせるような態度で接していたのか。要はどうして竹蔵を父の元に向かわせようと思ったのか。トワレの薫りが二人にとって更に、濃く甘く感じられたのは・・。ある時まで、ずっと描かれなかった妻の表情の意味。竹蔵に目隠しをして触れた兄の覚悟。竹蔵の想いを言葉で受け取り、日本を離れた地で、目隠しすることなく、竹蔵の名を呼ぶ兄が決意していたこと・・。読み、読み返し、理解する。。竹蔵を思うと辛すぎるけど、兄が自分以外の人の事も考え抜いた上で出した決断だったと思う。兄の姿を見つけ「兄さん!」と呼び手を振る竹蔵に振り返り、今まで彼に見せたことのなかった笑顔の、そのとびきりの笑顔の1コマにセリフは無い。竹蔵にはその表情は見えなかったかもしれない。でも、竹蔵に面と向かって伝えられなかった想いがすべてそこにあると感じた。そして、手紙・・・。もう・・涙なしには読めない・・。思い出しても、溢れてきてしまう。責任感、罪悪感、優しさ、愛。忍という人の本当の姿。。私にとってこの作品は、いつまでも余韻がおさまらない、胸に残る作品となりました。
いいねしたユーザ14人
レビューをシェアしよう!