このレビューはネタバレを含みます▼
才色兼備のバリキャリだが壊滅的な男運の主人公スミレが、捨て犬のようにゴミ箱に転がっていた美少年を拾い、亡き愛犬と同じ「モモ」と名付け、ペットとして彼と一緒に暮らしていく物語。国内外問わず幾度とドラマ化された本作を今更ながら試しに読んでみたら、予想以上に面白くて結局、全巻読了してしまいました。
ペットと飼い主という関係性に男女間ではないから無駄に傷付かない、お互いのバランスを保つ為に絶妙な距離感が実に良い。こういう存在に自分を含め、現代を生きる女性達から強い共感を得たのには深く頷けます。また、人生の荒波や辛い経験を積んできた人に突き刺さる名言の数々も見所のひとつ。作者の小川先生は実際に記者だった事もあり、新聞社の空気感や実情も現実的で、漫画の構成や展開が非常によく考え抜かれており、どのエピソードも印象深いです。また登場人物も皆、魅力的に思えるほど、深層心理的な部分まで丁寧に描かれていて、特にモモの人間像には個人的に好感が持てました。というのも、最愛の女性との共同生活に、ペットという境界線を超えるべきか迷いながら献身的にずっとスミレを支え、永遠に続く事のないシェルターを未来に残そう、そうして二人でいつまでも共に生きようと、飽くことのない愛を証明する為に、1人の人間として男として自立し成長していく姿は、あまりにも美しく、ひたむきで。ここまで愛されたら女性冥利に尽きるんじゃないかと羨ましくなっちゃうほど、その愛情の深さに心打たれました。
最初はデレのないツンばかりの取っつきにくいスミレも、モモと自然体で暮らしていくうちにどんどん本来の素の部分が引き出され、人間味を帯びていく過程も見ていて面白おかしく楽しく。何度も、もうだめかもしれない...とくじけそうになりながら、それでも待ち受ける試練やトラウマと闘い、乗り越えた最後には、仕事、親友、元彼との美しい思い出、両家族、愛するひと、そして彼との可愛い赤ちゃん...女性の夢やあこがれ全てをようやく手にしたスミレに、迷わず、拍手喝采を送りたいです。
読み終えた後、私もいつか出会う「あなたにふさわしい人になるために、今日も頑張ろう」。そんな幸せなきもちにさせてくれる傑作です。