薫りの継承
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薫りの継承

中村明日美子

ネタバレ
2020年12月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ 雰囲気に圧倒され余韻に浸れる作品。深いストーリーと設定で暗闇を感じ、読み終わると、どっと疲れる。攻めの竹蔵が兄さんと呼ぶのが好きだったので、兄さんと呼ぶ。最初の関係は竹蔵からだったが、仕掛けたのは兄さんだった。突然、薫りを纏って訪れ、自ら目隠しをして誘い抱かれた。目隠しをして待っている姿がおかしくて、そこまでできて、本能に赴くまま何回も抱かれたのに、心が通い合った後に、なぜ死んだのか。ふたりはずっと前からお互いを想っていた。違いは兄さんの愛は憎しみから生まれたものだった。兄さんは社会的な成功者であり、罪悪感や背徳感を抱えたまま、それでも血の繋がりに目を瞑って本能に抗えず抱かれ続けた。兄さんにとって心が通い合うとは、終焉を迎えるのと同じ意味だった。そして、竹蔵への想いを捨てられず自ら死を選んだ。気持ちを切り替えて、ふたりの狭い世界で生きるという選択はなかったのか。読者それぞれの解釈ができると思う。関わった女性への扱いが失礼でモヤモヤしたが、それがきっかけでふたりの関係が明らかになるのも説得力があった。息子を巻き込んだふたりの罪は重い。兄さんの少年時代のルックスが神だった。4.0
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