愛しさは胸に消えず
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愛しさは胸に消えず

梅太郎

それでも………生きてゆく。

ネタバレ
2020年12月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ 八百比丘尼を産んだとゆう人魚の肉を食し、心ならずも不老不死となった恋人達の短編連作です。
『愛しさは胸に消えず』『あなたのことだけ』
記憶を無くした現代の大学生・八尋と、献身的に介護する謎の同居人緑のお話。八尋の記憶が戻った時、長い長い時を経て、お互いの気持ちを伝え合い、これからの果てしない時間を共に生きてゆくことを前向きに決意します。
『秘して名もなき』『藤江の夢』
学友として出会った青一郎とその想い人だった押谷、青一郎に想いをよせ続ける藤江の壮年になってからのお話。愛する人と、その死を背負って、たった一人で生き続けてゆかねばならない藤江の心情が辛いです。
『鳴かないことなり』
血の繋がらない病弱で線の細い兄を、幼いままだと思い、汚してはならないと自分の想いを押し殺し、玩具を与える弟・一雪と、弟への想いを受け止めるが余りに、やはり自らの想いを鳴くこと無く幼いふりをして、お土産のヨーヨーを一生懸命に練習する兄・春彦の姿が切ない…昭和11年2月、しんしんと雪の降る中に語られる静かなお話です。
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