毒を喰らわば皿まで
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毒を喰らわば皿まで

十河/斎賀時人

美しいヴィランによる残忍な復讐劇

ネタバレ
2021年1月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ レンタルと並行して紙書籍で購入し、電子書籍も発売直後に迷わず購入しました。気の抜けない展開の連続で何度読んでも飽きません。
乙女ゲームの悪役令嬢の父で王国宰相に転生した「俺」がプレイヤーとして持っているゲーム知識、ゲーム世界に生きる人物として積み上げてきた経験や慣習、知識などを総動員してヒロインに逆襲するという大筋で、「ざまぁ」ものとも言えるでしょう。
攻略対象をヒロインから寝返らせる手腕の狡猾さ、ヒロインを追い落とす手口の悪辣さ、容赦のない「悪徳宰相」ぶりはいっそ気持ちがいい。
その一方で、愛娘を復讐劇の共犯者、駒の一つとして扱いながらも愛情と信頼を注いで彼女を幸福に導く「父」としての優しさも見せる、極端な両面性を持つ「俺」の人物像に興味が湧きます。
だからこそ、この「俺」を復讐劇に駆り立てたものが何だったのか知りたくなります。「ゲーム」のトゥルーエンドを迎えて復讐を終わりにもできたのに、輪廻までして完遂する、この執念はどこから来たのか。「俺」をこの世界に放り込んだ何者かへの反発か、アンドリムの矜持を貶めたことへの恨みか、愛娘が受けた屈辱に対する父としての怒りか、あるいはプレイヤーとしてゲームを自在に操り遊び尽くしてやろうという探究心か。その辺が読み解けるような続編があることを期待しています。
この作品を知ったのは小説投稿サイトでの書籍発行の告知でしたが、見落とさなくてよかった。良作に出会えて満足です。
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