このレビューはネタバレを含みます▼
山の神の声を聞く覡(かんなぎ)と、その能力を支える為に選ばれた「ためつもの」。男の子が生まれて記念に植樹をし、その木が常に無いスピードで成長すると、覡一族から迎えが来て、その子は生まれた家を離れて特定の覡のためつものとなります。幼い時に無理に連れて来られ、ためつものとしての務めはするものの、お互いにお互いを受け入れられない覡である雨敷家の長男・定用と、そのためつもの・豊のお話です。定用の弟・わたると、そのためつもの・竜がうまくいっていることに焦ったり、少しずつ打ち解け始めたら、豊がすぐに眠ってしまうようになったり、様々な事柄を乗り越えて心が一つになった時、豊が生まれた時に植えられた柚子の木が18年かかって花を咲かせます。序章に当たる『土塊』だけは独立した話で、大規模な山崩れによって一人の覡が亡くなります。物語が進む中に、亡くなった覡に何があったかと同時に、山に支配される覡とためつものとの絆の深さが明かされます。覡として純粋培養されてきたのだろう定用の不器用さがもどかしくも可愛らしいです。