怪盗かまいたち
」のレビュー

怪盗かまいたち

都戸利津

言葉が真実でも、別の意味を伝えている

2021年2月22日
レトロな感じが見事に描かれており、近代日本の町という舞台空間に放り込まれる。
絵が丁寧で驚かされる。日頃もっと手抜き風の白っぽいコマをほかで見ているため、このお値段でもこのくらい素晴らしいなら惜しくないと感じる。
ちょっと親しみ持てる温かい絵柄でミステリー進行、小道具的大道具的な描写が臨場感盛り上げる。最初から犯人はその人しか居ないのに、拾い上げてくる場面が自然で、え、違うのかなぁと他の可能性も当たる事を迷わせるストーリー展開。

一緒に収録された作品は画風で執筆時期が異なることは目に明らかなのに、やはりひとこまひとこまに精魂入った仕事を感じた。
別作品を連載されていた一時期、その掲載誌を買っていたことがあって、お力の程は知ってはいたが、一冊にまとまった物は今回が初めて。以前の認識以上に、より若手の頃よりのご活躍の様子がわかった。

ロマンスは無いが、初めからそこを読みたかった作家さんではなくて、大正ロマン?的な漫画を読みに来たので満足。洋物ばかり読むと、超ドメスティックな、ザ・日本で繰り広げられるものに来たくなるのだ。

薄くなく重すぎず、面倒臭くなく入り込めて、絵がしっかり。

他の少女漫画の価格水準ではないのが残念。
となると、購入は、私のように、既に何かで先生の作品をチラとでも見かけた人に絞られ勝ちになりそうで。
こういう巧い先生が居るのに、世間て(電子書籍の)、組織的に物量投入された造り物の評判を上げてるレビュー数に惑わされて、ホイホイと漫画的に微妙な(いや微妙過ぎるでしょ)レベルの作品へダーッと流れて行ってしまうんだなぁ(溜め息)。
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