予告状通りお宝を盗み出す怪盗かまいたち、その鮮やかすぎる驚きの手口を大胆不敵な方法でやってのける巧妙な手腕を楽しめるお話。
「嘘解きレトリック」を描いた作家様の、違った手法のミステリー。物語の最初からこの人犯人でしょと分かるのに、あまりにも大胆であまりにも上手い話っぷりにいつの間にか犯人ではないような気にさせられてしまう。念入りな下準備に話す順番の構成、そして話を聞いた人が幾重にも受け取れる言葉のチョイス。全てがとても巧妙なのに、全く不快感なく、あっ晴れだと思わせる清々しさに感服したし、完敗だと思いました。それは、彼の安心出来る声と話し方、嘘のない言葉、親しみやすい人間性と人の心に寄り添ってくれる優しさ故なのだと思うと、かまいたちが盗むお宝以上のものを被害者は与えられているのかもしれないと感じました。この作家様のストーリーの上手さはもっともっと評価されていいと思います。
最後に、「嘘解きレトリック」とのニアミス話がおまけでありましたが、これは本当に面白いし気になります。かまいたちvs鹿乃子&先生、この二組が対決したら一体どうなってしまうんだろうととてもワクワクしました。同じ年代を描いた両作品、続編やコラボを期待したいです。