木陰の欲望【単行本版(電子限定描き下ろし付)】
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木陰の欲望【単行本版(電子限定描き下ろし付)】

暮田マキネ

魅惑の暮田作品

ネタバレ
2021年2月26日
このレビューはネタバレを含みます▼ 『つむぎくんのさきっぽ』が暮田先生の初めての作品でした。それほど数多く読んだわけではありませんが、執着愛、歪んだ愛情のイメージが私の中で定着しています。(決してそればかりではありません。)とても重く苦しいけれど、乗り越えた先に見える希望に光が射して、幸せな笑顔が待っている…といった作風ですねぇ。ちなみに、つむぎくんの方がスピンオフです。
今作品もまた、暮田先生の世界観が如実に表れています。身体の弱い子供を厄介払いする親が何処にいるのだろう。疎まれて孤独な鼎に、温かい感情をもたらす瑞希は、唯一の希望であり、暗い部屋に射し込む一筋の光です。この作品に限っては、執着という言葉が私的にはしっくりこないんです。瑞希は、鼎にとって生きる糧なんですよね。狭い世界にしかいられない鼎の全てです。決して瑞希の背中のきずは、互いを縛りつけるものではなく、足枷ではないと思います。瑞希にしても、鼎は共に生きて来た半身のよう…例えるなら二枚貝のような感じかな?二枚貝のその合わさる片割れは、他には合わないと聞いた事があります。鼎と瑞希は二人でいる事が、はじめから決まっていたのかなぁ、と思います。木陰から一歩外へ踏み出して、陽の光を浴びて笑いあっていて欲しいと願うばかりです。
暮田作品のもうひとつの特徴は、主人公たちを支える脇の人がとてもいい人ばかりなんですよね~重さや暗さを緩衝する優しさが癒されます。
3月3日ひな祭りの日に新作『LUCK』が発売されます。どんな愛を展開するのか楽しみしかありません。
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