500年の営み
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500年の営み

山中ヒコ

ポンコツアンドロイドは砂漠の夢を見るか

ネタバレ
2021年3月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ 反目する家同士の光と寅は幼馴染を経て恋人となりますが、不慮の事故で光が亡くなり、光のいない人生に絶望した寅は自ら命を断ちます。が、目が覚めると光によく似たアンドロイドのヒカルが自分を起動してくれと頼んできます。起動されたヒカルは、これでようやく生まれることができたと涙を流します。実は寅が自死を謀ってから250年が過ぎており、ダメージを受けた寅の脳手術が可能となり、光そっくりのアンドロイドが、その目覚めを迎えられるようにと、両親が寅の冷凍保存契約していたのでした。ところがヒカルはかなりのポンコツで、ちっとも光に似ていません。それでも一生懸命頑張るヒカルに、かつて命を賭けた恋人とは違う想いに捉われた寅は、実際には行ったことの無い尾瀬のことを覚えていないとヒカルを責めます。尾瀬は、いつか光と一緒に行こうと約束していた場所の一つでした。250年後の尾瀬に水芭蕉やニッコウキスゲがあるのかはわからないけど、いつか一緒に行こうと約束をして、初めて寅はヒカルと一夜を共にします。ところが目覚めるとヒカルは居ず、かつての恋人にそっくりな明らかにハイスペックなアンドロイドが寅を起こします。かつて愛した恋人そのもののようなアンドロイドではなく、ポンコツなアンドロイドのヒカルを探し求める寅、次に目覚めたのは、さらに250年後でした。それでも寅はヒカルを求めて尾瀬を目指します。ロースペックで健気なアンドロイドと、恋人の死に自死を選んだ過去を踏み越え、ひたすら前進する主人公の姿に胸を打たれます。
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