白の無言
」のレビュー

白の無言

大竹直子

「しのぶれど」から追って。

ネタバレ
2021年3月16日
このレビューはネタバレを含みます▼ 高橋,桐島の終わり方は、背後から頭を殴られた様な衝撃でした。作者様の後書きで担当者の「高橋,桐島はBLではなく男色」のコメントを見て、いつの間にか自分は「フランダースの犬」はオリジナル版が好きだったのに、ハリウッド版の様な作品を好んでいたな、と気付きました。思い出すと、今も心に残っている作品の作者様は、優しい完結ではなく、描き切っていたな、と…。
「しのぶれど」から読んでいて疑問に思っていたことは、成績優秀の桐島がなぜ当時エリートと言われていた海軍ではなく陸軍を選んだのか でした。この作品を読んでやっと納得。よく考えたら桐島は眼鏡でしたね…。「風立ちぬ」の解説でもある様に眼鏡をかける必要のある男子は健康体とは言えず、とても肩身の狭い思いをしたと…。それにつけ肺を患った少年期。父親の後押しがないと、陸軍士官学校にも入学出来なかったんだなと、不遇な始まりが桐島にはあったんだなと思いました。
兄を追って軍人の道へ進んだ桐島。その兄が日露戦争の経験からPTSDの様な怒りを弟である桐島にぶつける。「しのぶれど」で、高橋が揶揄われて襲われそうになった時、「便所が近くなるぞ」と言った桐島の言葉の裏が、まさかここで繋がるなんて…💦高橋はずっとそんな彼を、芸者である母の影響だと思っていたのに…。
最後に落ち着いて桐島の人生を振り返ると、きっともうある程度の頃から覚悟を決めていたんだろうなと思いました。将校の宴席に呼ばれたら、身体の準備までして行っていたんだろうなと。それが稚児制度の残る軍人の道を自分の人生の道として選んだ桐島の人生だったんだな、と…。それはある意味、男色でも衆道の方に思っていたんでしょうかね…😩
高橋の想い対する返答は、彼が残した軍刀で自○した、そこに尽きるんだろうなと思いました。例え桐島が二.二六事件を生き残ったとしても、殆どの将校はその後 前線送りにされたので、作者様は最初から桐島には短い生涯を描かれていたのかな…。「聖セバスチャン」が冒頭から結末まで出ていましたが、作者様の描いた耽美な世界、ハピエンBLばかりを読んでいた自分にはかなりのショックで、良い意味でこの世界観が好きになったきっかけを思い出させてくれた物語でした。高橋はきっと戦争を生き抜き、戦後は家庭を持ったんでしょうね…。それが戦前の価値観を持った男性なんだろうなと思いました。
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