薔薇王の葬列
」のレビュー

薔薇王の葬列

菅野文

男としてのし上がるほど女として花開く

ネタバレ
2021年3月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ 【2021年4月18日編集】無料3巻分までの感想を以前載せていたのですが、最新の15巻まで読んだので書き直します。
久々に紙で欲しい本に出会いました。マンガはできるだけ電子書籍で済ませていたのですが、この作品はどうしても紙で欲しかったので書店で買うようにしました。
感想は色々あるのですが、物語を読んでいて最も感じるのは背徳の美しさです。第1部で2人が隠れ家で過ごす数日間のエピソード(特に二人で川で体を清めるシーン)は読んでいてドキドキしますし、同じく第1部ラスト、禁欲的なヘンリーが「リチャードを奪い尽くしてしまいたい」と吐露し、体を重ねようとするシーンはページを追っていくほどに深い陶酔に浸ることが出来ます。薔薇戦争の行方そのものに加え、裏側で繰り広げられている愛憎劇にものめり込んでしまいます。
第2部のヘンリー亡き後(と断定するにはまだ早いかもしれませんが)、リチャードを王にするため画策するキングメイカー・バッキンガムが現れますが、彼もヘンリーと違う高揚感を与えてくれます。無垢で禁欲的なヘンリーとは対照的に、野心家で積極的にリチャードに迫っていくバッキンガムは、リチャードの身の内にある愛欲を呼び覚まし、男として冠を掴んだリチャードの女の部分をさらに磨き上げていきます。リチャードの半身として王の補佐を務めつつ、皆の知らないところで彼を求める姿は推さずにはいられません(最推しはヘンリー×リチャードですが)!
その他脇を固めるキャラクターも魅力的な人物ばかりです。ヘンリーの血の繋がらない息子でリチャードの体の秘密を知って恋に落ちるエドワード、リチャードの不器用な優しさに惹かれ想いを寄せるアン、産まれた時から世話役を任され想いを秘め続けてきた腹心の部下ケイツビーなど、リチャードの周りには彼が思う以上に彼を愛する人々がいます。
最新の15巻ではヘンリーに瓜二つの謎の殺し屋・ジェイムズがリチャードと邂逅し、バッキンガムとリチャードは戦争に突入という状態でバッキンガム退場なの? という不安なフラグが立った状態なので今後どうなっていくかが益々楽しみです。バッキンガムとリチャードの結末、そして次に来るであろうジェイムズ編に期待しかありません。次巻発売を心待ちにしています。
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