毒を喰らわば皿まで
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毒を喰らわば皿まで

十河/斎賀時人

読者も悪の宰相に引き込まれ転がされる

ネタバレ
2021年4月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ 文脈に独特の癖や空気があるのですが、これがまた。ああこれがこの作者好みの言い回しか、フフ、好きだなってハマってく。感情の起伏や善悪を押し付けずに淡々と惑わしてくるからいけません。褒めてます。舞台はこうだと、建物や背景を細部まで伝えてくるのに。至極丁寧に説明をくれる癖に!最後の確証を読者の心中に生み出してくる。人の気持ちや温度や感情の起伏を、吐露を。絶妙に素っ気なく、上辺だけ、気になる部分だけ与えてするりと交わしていくところが。もやっともピンとも来てて、この得心でいいのかと彼(主人公)の顔色を伺うと、「……馬鹿め、説明などいらないだろう?」と。最初から読んでるんだ。なあほらもう理解できるよな?と、言われている気分にさせてくる。そのつれなさ。常に、主人公である宰相に連れて行かれてる感すごい。そこへ辿り着く為に貫く…彼の悪役であるという意志に思い切り貫かれて、多くの登場人物と共に彼に騙され、彼に惹かれ、彼から目を離せなくなり、そして軈て、嘲笑う彼の側を、その汚れた道程を離れられなくなる。純粋さが善ではない、ならば……汚泥の道を彼と共に歩こう(読んでて、善ではない彼を擁護し、彼を肯定する一人になってしまう)。なにこれ。私がヨルガかよ。みんなそんな気になっちゃうよ。読んで……面白いから。読んで。
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