兄ちゃんの話
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兄ちゃんの話

池玲文

家族とは

ネタバレ
2021年4月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ と、いう形について考えさせられた深いお話です。
弟・史嵩から視た兄の生き方が、繊細に描かれています。最近、ハマり出した池作品ですが、丁寧な心理描写でグッと引き込まれますね。
忙しい母に代わり、祖母の介護を中学生ながら果たす兄ちゃん(嵩大)弟に負担をかけず、自分の自由を制限し、一人背負う事は並大抵の事ではないと思います。老々介護と言われる昨今、孫世代に介護の手が必要な事も事実としてあります。兄ちゃんの心の安らぎは、なな君なんですよね。なな君も優しくて、いい子です。
二人の仲を知ってしまった弟の複雑な心境も、わかるような気がします。ショックはもちろんの事、自分の自慢の兄ちゃんが奪われた寂しさ。泣いちゃいますよ。それでもちゃんと兄を理解して、怒る母の心ない言葉に対して、投げ掛けた史嵩の言葉が胸に刺さり泣かずにはいられませんでした。家族こそ味方でありたい…
そんな中の祖母の死。兄ちゃんの罪悪感からくる苦しみは、あれこそ本当の心の声なんだと思うと、理解出来るから辛いんです。それでいいんだと思うのです。自分の心に正直で…。精一杯、孫として愛情を注いだと思えます。おばあちゃんが口にした言葉も、経験上とてもわかり辛いですが、おばあちゃんの精一杯の気持ちだと思うと涙。涙。
家族がそれぞれ思いやりを抱きしめ支えあって、ひとつの形になるんですよね。はぁ、涙が止まりません。
兄ちゃんを支えた史嵩も、なな君も立派です!みんな、幸せになって欲しいです。
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