メトロ【電子限定描き下ろし付き】
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メトロ【電子限定描き下ろし付き】

本郷地下

強く生き抜いて欲しい

ネタバレ
2021年5月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ 初読み作家様です。フリマの出品でよく見かけるこの作品。人気あるのかな?と気になっていました。表紙絵が、地下鉄電車内でのチカンの様子に、手が伸びずにいました。
が、結局気になるので、ポチっと購入。
高校生の男の子が、メトロでされるがままに伸びてきた手に身を任す……背徳的でインモラルな光景。
なぜ?
触れる手の正体をつかみ、そこから始まる肉欲の世界…
本の帯にはSM関係とありますが、どうしてそんな表現になるのか理解に苦しみます。
確かに、会話を録音して取引をした水葵ですが、背表紙にあるマゾヒスティックでも、命令でもない取引だと思います。
父親の不倫から、性的な事を嫌い水葵を抑圧する母親。抑圧すればするほど、解放したくなるのは当然の欲望なんです。一度知ってしまった解放感や快楽は、身体が覚えてしまうもの。
水葵の母親は、性的な事だけでなく、水葵自身を呪縛したように思います。病んでしまったのも辛いです。
一方の水葵の欲望を解放した忍。過去の事故でピアニストの世界を奪われて…
忍の行動の意味がわかった時、辛くなりました。
生きる意味を失くし、絶望的になった忍の苦しみは、計り知れないものがあります。
全ての幕を閉じてはいけない。終わらせてはいけないんです。
誰かに必要とされているなら、その人のために生き抜いて欲しい。死んだ感情が息を吹き替えしてるのは、生きてる証だから。無意識に生きようとしてるのは当然の事なんですよね…
水葵だって、母親と向き合えるまで強くなったのだから、二人でいればもっと強くなれると思います。
メトロを抜けたら光が射します。光は希望です。
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