春の修羅【コミックス版】
」のレビュー

春の修羅【コミックス版】

miso

独特な魅力

2021年5月14日
読み始めの、背徳的で閉鎖的な印象が、読み終わった後は、全く違う印象になる作品です。登場人物が多いので、話が複雑そうに思えるけれど、傷つきながら生きてきた二人の恋を軸に、多感で特別な年代の子たちが駆け抜けていく人生のほんの一瞬の時間を切り取ったお話。暴力的な描写が多く、ハードで重い設定なのに、どこかおだやかで、抒情的で美しく、登場人物に悪人で嫌な人が一人も出てこない不思議さ。 兄弟の呪縛、占い師の呪縛、母親に対する呪縛…それぞれの永久凍土を少しずつ溶かしながら、”春は誰にでも訪れる”。夜の重い雨のシーンで始まり、春の清々しい風のなかに終わる上手さに脱帽です。作中の脇役セリフに「なんだか夢でも見てたみたいだな」とありますが、読者も同じように感じるでしょう。もう1cpのお話が入っています。こちらも、設定重めですが、攻めの子の明朗さとお話の分かりやすさで、読みやすく面白かったです。
なお、暴力、流血、ドラッグ、女の子とのシーン等がありますので、苦手な方はご注意。
いいねしたユーザ6人
レビューをシェアしよう!