スズヘビ求愛論
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スズヘビ求愛論

夏生んな

素晴らしいな…と思いました

ネタバレ
2021年5月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ こんなに素敵な作品を届けてくれた作者さんと編集さんに、感謝です。
時々、作者さんだけでなく、編集さんてすごいなって思うことがあります。今回も、あとがきを読んで、作者さんの魅力や持ち味を最大限に引き出した編集さんと、それに応えた作者さんのタッグに心の中で拍手がわき起こりました。
白蛇×人間と考えていた作者さんに、「雀でいきましょう」って提案する編集さんの脳内を覗きたくなります。編集さんのおススメ本とか知りたくなりますし。
作者さんは、そこから、蛇やら雀やら、相当にリサーチして、ストーリーに無理や違和感を感じさせないままに、描き切っておられます。200ページ超えのストーリーにすっかり引き込まれ、笑い、泣き、心震え、幸せな気持ちで読み終えました。
絵は、人型はもちろんですが、蛇や雀のときの表情まで豊かで、可愛いなって思ったり、哀しみに共感したり、スッと心がキャラたちに近付きます。(蛇嫌いとか言っていられない)
作者さんが衝撃を受けた、蛇の下半身事情。恐らく、作者さん渾身の異種間性行為だったと思うのです。修正なしで拝見したかった…。
受攻も安易ではなく(ある方がない方に入れるとかでなく)、収集した蛇の神話と雀の生態(退化)を元にして、ストーリーに広がりを持たせた上での交わりに、何だか感動しました。絵は可愛い系なのに、その交わりは、情欲が露わになっています。絵面的に、ふんどしってエロいですね…。
あと、もう一つの肝である「生き物を生きたまま食べる」ということに対する白什の葛藤が、痛いくらいに伝わってきました。読み返したときに、「うーまいうーまい」って歌う白什の笑顔に、不意に涙が出そうになりました。こんな風に食事をしたことがないんだなって思うと、胸が詰まります。そして、後悔よりも重い罪悪を抱えることとなる白什とそれに対するコマヅの想いが、さらに胸に響きます。
それを越えての、あったかい書下ろし。蛇の習性を通して語られる愛が甘い。幸せな読後感。
デビュー1周年に初コミックス発行とのこと。今後も応援したい作者さんです。
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