百いろどうぐばこ
」のレビュー

百いろどうぐばこ

わたなべあじあ

美麗に語られる和物幻想譚

ネタバレ
2021年5月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ 道具屋と呼ばれる此岸と彼岸を結ぶ廓では、主の梟が迷える魂を鎮める役を担っています。長く切ない想いを抱えて、此岸には留まれず、さりとて彼岸に渡ることもできずにいる者達と取引をし、それぞれを道具に姿を変え、新たな役割を与えるのが梟でした。梟を始め、眷属である猫の黒蜜、祟り神であり梟の愛人でもある鴉を封印する千足、さらに空蝉(仮の体)を与えられた小さき者達の活躍する美しく幻想的な和物ファンタジーです。『ROMEO』とは一転、設定についての説明が一切無いため最初はかなりわかり辛く、読む人を選ぶタイプのお話かもしれませんが、独特の世界観が魅力的です。ミニキャラ達の活躍する掌編もちょこちょこと差し込まれていて、そちらは可愛らしくて癒されます。弐巻の最後に収録されている『あまい、あまい』だけは、『百いろ』以前に描かれた『百いろ』の元となった作品だそうで、本編とは独立した短編となっています。
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