渾名をくれ
」のレビュー

渾名をくれ

新井煮干し子

もしこの作品に出会えなかったら…

ネタバレ
2021年6月16日
このレビューはネタバレを含みます▼ 読むのに勇気が要りました。何らかの意味で気持ちを揺すぶられる気がしたので。でも読んで良かったです。…というより、読んだ今日から違う1日が始まると思えました。私事ですが、20年以上心で突っかかっていたモノがサラリと流れて行きました。私自身が若かりし頃、天羽に似た愛し方をしたからだと思います。私の場合、気持ちも告げなかったし告げたいとも思えなかったし、告げたら全て壊れる気がして、気持ち自体封印してしまいました。若さ故の未熟な恋で終わらせられず、長年どうしてそんな行動をしたのか分からなかったし、過去と断ち切れない部分として一生引きずるのかなと思っていたのですが、天羽を見ていて自身の気持ちに名前がつけられて行くようで、心が軽くなりました。天羽の様に、信仰に近い存在であるジョゼが側に居ようと言ってきたら…。扉を開けられず部屋の前で泣く天羽の涙が…悲しいのでも苦しいのでもなく…何というか…。
でも、天羽はジョゼの絵を描きました。ジョゼは、髪を黒くしてジョゼでなくなりました。天羽がジョゼの名前を呼ぶ日はいつか来ると私は思います。
いいねしたユーザ6人
レビューをシェアしよう!