世田谷シンクロニシティ
」のレビュー

世田谷シンクロニシティ

本郷地下

不安定で不完全な幸せがあってもいいのにな

ネタバレ
2021年7月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ 「メトロ」に続き、2作目です。毎度個性的な設定を思いつかれるなぁと思います。ただ、今回、割とシリアス目な設定を組んでおられますが、あっさりした「良かったね」で終わってしまうようなラストが少し残念だなと感じてしまいました。
自分でもつかみ切れないセクシュアリティは生き辛さがあるだろうなと思います。あまり聞かないこと故、フィクションとは言え、相談できる人も場所もないことは心細いこともあるだろうなと勝手な想像も膨らみます。深町の言うように、自分のことを無理に何かに当てはめなくてもいいけれど、当てはまらないことがたまらなく不安になることもあります。堂々とするのは、なかなか難しいよ…と小心者の私はそう思ってしまいます。
「好きになるのは女の子、欲情するのは男の子」という特性は、理性でどうにかなる類のものではなく、舞さん(女の子)のことが好きで付き合っていながら、深町(男の子)に欲情してセ ックスしてしまう流れは、あって然るべきなんだなと思うしかありませんが、モヤモヤはします。特に、バスのシーンが「嫌だな」って思いました。セ ックスよりも不誠実に感じてしまいました。でも、遊園地のお化け屋敷の時のような2人は好きでした。
話の結末としては、樋村は男である深町を好きになり、恋愛感情を抱く相手と欲情する相手が一致するという「めでたし」なラストです。でも、どうしてもしっくりきませんでした。「好きになるのは女の子、欲情するのは男の子」のままでは、樋村を幸せにする道はなかったのかな…と思ってしまって。つまり、私的には、その設定のまま、樋村の未来を落とし込んでほしかったなと思いました。数年後も深町と(仲良く)暮らす樋村はとても幸せなんだと思います。でも、気持ちと体が一致しない状態での「幸せ」があったらよかったなと思ったのです。これだと、「病気じゃない」と言いつつ、まるで病気が治ったかのようなインパクトを与えられてしまいます。深町の言うように「無理に決めなくても変わっても変わらなくてもいい」と分かった上で、この設定だからこその不安定な状態でも、不完全な状態でも、幸せの形はあるよというようなラストを個人的に望んでしまいました。
色々考えさせられました。フォローさん方が絶賛の新作オメガバースも楽しみです!
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