アンチアルファ
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アンチアルファ

奥田枠

続編アンチアルファアナザーも一緒に

ネタバレ
2021年7月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ オメガバースではありますが、幼少時に遺伝子検査で相性の良いαとΩのカップリングが政府により行われて、番が管理されている社会。
ディストピアの管理社会ものですね。
同じくディストピア&オメガバースなら「オメガメガエラ」も良作なのでおすすめですが、良く考えたらオメガバース自体が人類の人口減少に対応した進化なので、元々ディストピアぽいのか。

ディストピアにジェンダー問題を取り込むと管理だけでなく階級社会ものにもなる気がします。
有名なのはドラマ化もした「侍女の物語」でしょうか。
管理社会の中で侍女達は新たに名前をつけられます。
オブフレッド、フレッドの~という名前で個人を消され、男性の所持物として扱われ、子供を産む為の道具とされるのです。
不妊の原因が女にあるとされているので、子供が産めなければ廃棄処分となるなか、年齢という限界が近付いている主人公がどんな未来を選ぶかは原作小説(廃版だったのがドラマ化のおかげで再発売!)でどうぞ。

この作品でもΩを守る為に始まったとされる管理体制は結局Ωがαの所有物になる為の制度で人権なんて本当はどうでもいいのです。
Ωが自分の意思で生きられるかが相手のαの考え方や環境によるとか、法を作るのがα(男性)なので当然の結果ですが。

そんな社会に人として、人らしく生きようとする二人の少年の物語です。
家の為にαとして育てられたΩの礼、ヒエラルキーの頂点にいながらΩを個人として扱うαの悠仁、二人が常に対等であろうとして、対等であるべきだと考えているのがとても良かったです。形骸化した番のシステムの本来の意味を取り戻していくわけですが、その過程で差別の無い社会をとても自然に成り立たせようとする二人は本当に格好いい!
最初は悠仁のキャラがあまり好きなタイプでは無いなと思っていたのですが、愛の証だぜ?で落ちました…
読み直したらΩに対する差別意識が無いのは悠仁の方だし、礼がαだと思っていた時から一目惚れかなって感じだし、フリーダムで素晴らしかった。
紫苑君がどうなったのかは気になりますが、選ぶ側になれなくても奪われないと言いきる意思を持つ彼は自分の力で幸せになれそう。
何かあったら礼(と悠仁)が全力で守りにいきそうだけど。
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