きぐるみセンチメンタル【イラスト入り】
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きぐるみセンチメンタル【イラスト入り】

宇喜田紅/九重シャム

愛すればこそ、の迷走もあり

2021年7月13日
以前、ある小説家が、自分は出版社やSNSを通じて読者の声を知る他に書籍販売サイトなどにレビューを見に行くことがあり、レビューの数=読者数ではないがレビューが少ないと手に取りにくい人もいるだろうと思うと、どうか一言でもレビューをお願いしますと祈る自分もいる、と笑っておられました。
レビューが多い人気作や優れたレビュアーの方達が投稿している作品は安心ですが、自分が感動や色々な感情をもらった作品にレビューが少ないと、私もごまめの歯ぎしりであっても何かできることはないかと落ち着きません…。
このお話は、広告代理店勤務の木野一(はじめ)が、誰にも内緒の週末ごとのお楽しみ(着ぐるみイベントに行くこと) の最中、ついに理想の"恋人"に出会う…という55ページの短編です。
主人公が、着ぐるみモルモル愛が高じてまんまと公私混同してのけたり(?)、モルモルとそれを演じる加賀谷を天秤にかけてみたりと、可愛くておかしくてハラハラするエピソードがテンポよく続きます。恋も初めてのあれも瑞々しい!
宇喜多作品を読むのは『switch』『鵺』に続き3作目ですが、自分が文章を読み書きする時のリズムと近い部分がある気がしています。
タタタ、タタタ、タタタ、タ、タタタ、タタタ、タ…
タタタ、タタタ、タタタ、タ、タタタ、タタタ、タタタ、タ…
ある作品に惹かれる理由にはそういうこともあるなぁと改めて気づかせてくれる作品でした。
ところで冒頭の小説家は、レビューの内容をどう思うかと訊かれ、作品を送り出したからには肯定・否定どう思われてもいいと言った上で、レビューには面白かった辛かった泣けた笑ったという読後感を綴ったものや内容に踏み込んで考察するものなど色々あることがよく、自分のフィーリングに合うレビューを探すのは楽しいと思う、自分自身は本の内容紹介プラス考察というオーソドックスな書評スタイルがしっくりくる…というようなお話をされ、そういうものか、と感じたことを覚えています。
自分がレビューを書くようになってからは常にそれが頭のどこかにあり、内容紹介に挑戦しますが、いつしか迷路に入り込み、"紹介"ならぬ"暴露"になって猛省、つい先頃も投稿後ものの数時間で書き直す羽目に…。あぁ、穴があったら己を埋めてやりたい(運悪く配慮に欠けたレビューを目にされた皆様には心の底からお詫びします)。
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