犬も喰わない
」のレビュー

犬も喰わない

彩景でりこ

始まらなければ終わらずに済む恋

ネタバレ
2021年7月16日
このレビューはネタバレを含みます▼ 複雑で難儀で、筆舌に尽くし難い人間の恋情を、アンニュイ且つ上品に官能的に表現している作品でした。素晴らしいストーリーだった〜。
キーワードは、「追われる男、追う男、追う男を追う男」です。愛し過ぎているからこそ、本当に欲しいものだからこそ、手に入らなければいい、というその感情は一体何なのか。きっとそれは、始まらなければ終わりもない、終わらせたくないから始めもしない、そういう恋の仕方なんだろうなあ。その代わり、想い人のものを奪う事で愛を表現して、また奪われる方も奪われる事で想い人の愛を確認する。いやまじどんなプレイだよってツッコミたくなるけど、それが2人の恋愛の形なんだろうな。そしてその2人の関係を利用してわざわざ加わろうとする“追う男を追う男”、ここがまさにこの作品のタイトルに直接繋がるポイントですね。
山代さんの最初の恋人、志村さんが言った、恋愛くらいだよ、身勝手になれるのなんて、、、という言葉、この作品を一文で表したらその言葉が1番しっくりくるなあと思いました。胸に刺さりました。
全く終わり方想像出来ない物語でしたが、ああいう風な結末で描いてくださったでりこ先生、素晴らしいです!感無量。人間の心って、複雑で矛盾だらけだからおもしろいし魅力的だと思います。
同時収録短編作『写真』も、『犬も喰わない』という表題作のテーマに沿った物語で、読後はなんとも表現し難い気持ちになりました。切なくて切なくて…。表題作同様良作でした。
BL AWARD 2016異色ランキング6位です。
番外編もあります。
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