鍵 -かぎ-
」のレビュー

鍵 -かぎ-

望月花梨

あぁ、作者様の世界に捕らえられてしまった

2021年7月20日
フォローしてくださった方のレビューを拝見していて、目に留まった作品。表題作他4編+表題作のオマケが収録された短編集です。
もう、しばらくは、作者さんの世界にだけ浸っていたいような気持ちになっています。この感覚をどう表現したらいいのか、ちょっと分からないのですが、この世界を知れて良かったとしか言えません。
表題作『鍵』。仲良くじゃれ合う中学生の男の子と男の子。女子生徒に「ホモなんじゃないの」とからかわれるくらい仲良しの服部と亀田。物語のキーとなるのは、まさしく『鍵』。心に掛けられた鍵とロッカーの鍵。ロッカーの鍵を開けるということは、心の鍵も開けられるということ。それが開けば…関係が崩れる…。はぁ…胸が締め付けられます。そして、ホックの描写…もう、ダメだ…完全にこの世界に取り込まれました。
作者さんが心配されていたオマケ(「ノドアメイカガ」ってとてもいいですね)ですが、私は蛇足とは思わず、ありがたかったです。
他の短編もどれも素晴らしく好きです。
『アルカロイド』微量の毒は、思わぬ甘さを持っているのかもしれません。
『呼吸』何とも胸が痛む、胸に刺さる、息が詰まるような残酷さを含んでいながら、スッと息を吸い込めるようなラスト。未熟さと驚くほどの深慮と、この世代特有の空気感にアテられました。
『夜 夜中』絶妙…としか言葉が思いつきません。
『犬と夏服』「―――お前ん家は犬でも飼ってるの?」へ繋がる物語。とても好きでした。非常に、後引くラストです…。これは、どの作品にも共通して言えることかも。心に引っ掛かりを残して、取れません。でも、それがいい、と思えます。
本当に、出会えて良かったと思える作品&作者さんです。こちらは2003年の作品で、2005年から漫画を描かれていないようで残念ですが、他の作品も読みます。フォローさんのおススメレビューに感謝です。
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