君の名前で僕を呼んで
」のレビュー

君の名前で僕を呼んで

アンドレ・アシマン/高岡香

生涯で、ただ一度きりの恋をしたふたりは…

2021年7月25日
2018年日本公開の同名の映画をご覧になったことはありますか?(自分は今年の始めにHuluで見ました) イタリアを舞台に、17歳の少年エリオと、アメリカから来た24歳のオリヴァーのひと夏の恋を描いた映画で、人物の佇まいや風景、エリオの純情やナイーブさもオリヴァーの笑顔も、ふたりの恋の駆け引きもキスも愛の交歓も、何もかもがきらきらと輝くような美しさを放っていました。
こちらはその映画の原作(上下巻) です。
エリオの一人称で書かれたこの作品、映画を観るだけでは分からなかった場面の流れやエリオの心情がよく分かった…などという生易しいものではありません。
彼がオリヴァーに夢中で恋をし、その愛を身も心も狂おしいほど欲する一喜一憂が、これでもかと描写されていて、読み手である自分はその感情の奔流に飲み込まれて苦しいほどでした。人はこんなにも瞬間瞬間、絶え間なく感情が動いているものだったかと呆然とするほど。自分なら自分の目からすら隠したくなるようなエゴや惨めさやなりふり構わなさも、つぶさに明らかにされていて、こちらの心臓までやられそうでした。
そして実に、映画はふたりの恋の触り(ハイライト) でしかなかったことに驚愕。いえ、むしろ原作にはあの夏から20年先に至るまでのさらに素晴らしい恋の軌跡が描かれていました。あぁ、本当に読んでよかった…!
一生に一度、出会えるか出会えないかという恋をしたふたりの物語に、何度も胸が震え目に涙が浮かび、身体中がしびれる喜びで満たされました。
(販売終了になる前にDVDやBlu-ray、サントラを購入決定)
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