11人いる!
」のレビュー

11人いる!

萩尾望都

夢と希望、そして絶望を教えてくれた作品

ネタバレ
2021年7月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ *2021/07/29まで還元・立ち読み増量中*
→全320ページ中125ページ=表題作まるっと立読み可。

【11人いる! 】【東の地平 西の永遠(とわ)】【スペースストリート】 の3部立て。

【11人いる!】宇宙大学への入学を夢見る出身星系もバラバラな受験生たち。10人ごとのチームに分けられ試験会場の宇宙船に着くと11人いる!…と始まるお話。トラブルに次ぐトラブル!彼らの合否の行方は?
初めて読んだ中学生当時も結末を知っている今も、手に汗握りストーリーを追います。極限状態で彼ら一人ひとりの取った行動はどれも皆まごうかたなき人間の真の姿で、自分を棚上げして高みから彼らを非難できますかと読み手に突き付けるかのよう。緊迫の中、カッコいいタダと可愛いフロル*の間で育まれる好意に気持ちが救われます。
【東の地平 西の永遠】宇宙大学に入学した仲間と別れて国に戻り王位を継いだ“王さま”から届く招待状。友人代表で訪ねたタダとフロルは突然起きたクーデターに巻き込まれ …?
戦争、陰謀、暗殺、人質。国の対立に人の思惑が交錯し、もつれ、そのほどけない網目の中に夢と希望をもがれて落ちた人の運命に、突っ伏して泣いた当時を思い出します。
自分が知り得た情報だけをもとに形成した"正義" を振りかざし行動する可能性は誰もが持っていて、だからもし彼や彼女(或いは誰か)を100%罪人と糾弾すれば自らも同じ穴の狢になるのだと教えてくれた作品でした。ここでもタダの誠実さとフロルの真っ直ぐさに救われました。

萩尾望都先生の作品との出会いがなかったら、どれほど味気ない人生になっていただろう。ありとあらゆる感情や条理・不条理などを作品の数々で教わった気がします。
1コマ1コマに凝縮されている物語の緻密な構成や重層的なエピソード、展開のスピード感と躍動感、キャラ1人ひとりの粒立った魅力と厚みとリアリティ、細やかな心情描写、美しい描線…どれ一つを取っても誰も追随できない極致にあり、他のレビュアーさまの"唯一無二" という表現こそがピッタリですね。

*フロルを両性と書いているレビューがありますが、男女未分化と仰りたかったのかなと思います
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