未熟な僕らは夏に為る 【短編】
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未熟な僕らは夏に為る 【短編】

hitomi

人と人を離し、或いは結びつける言葉とは

2021年8月1日
私たちが普段日常で交わす会話は、たとえば「ちょっと行ってくる」のように、主語もなければどこへ行くとも言わず、ちょっとがどのくらいの時間(あるいは日数)なのかや、いつ戻ってくるのか(そもそも帰ってくるつもりなのか) すら告げず、しかも直前の会話を受けてではなく数日前のやり取りの続きをいきなり始めた場合であっても、相手と自分とが積み上げ、重ね、撚り合わせてきた関係の文脈の中で大抵は正しく認識・理解される……改めて考えると、これってすごいことですね。
このお話は、気まぐれで田舎にやってきた野島大也(だいや)が3年前から当地に住む尾田川祐介(ゆうすけ)と出会い変わっていく中で言葉により関係を見つめる、40ページの短編です(8/3までセール)。
フォローさま始めレビューされている方々が皆、口を揃えて仰るように絵が本当に美しくリアル。目が痛いほど日差しが眩しい夏の青空、草いきれが感じられる乾いた田舎道、年長者たちの顔に刻まれた優しい笑顔、日が落ちてから縁側で涼む夜風、寝そべった背中に感じる柔らかい畳、そして汗ばんで少し湿った祐介の髪の毛も、大也が胸に感じたヒリヒリする痛みまでもが、ありありとそこに息づいて感じられ、なんとも言えない幸福感に浸りました。
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